2020年から数年間、世界的なパンデミックとなった新型コロナウイルス感染症。当時は、喉の痛みや発熱があれば「コロナ」を疑い、すぐに検査を受けた方が多いでしょう。また、症状が出てから9日以内ならば「抗原検査」、無症状でも感染者と接触があった場合は「PCR検査」というように、わたしたち一般生活者も検査の種類を認識しながら新型コロナウイルス感染症対策に取り組んでいました。
インフルエンザにも複数の検査方法があるのをご存知ですか?
一方で、アボットが日本で2024年12月に実施した調査i によると、インフルエンザ検査を受けた際に検査の種類を認識していた人は、全体の49% にとどまりました(調査対象:全国の20~65歳の男女327名)。そこで、インフルエンザの検査で最も一般的に知られている「抗原検査」と、コロナ禍をきっかけに導入した病院やクリニックが増えた「遺伝子検査(核酸増幅検査)」ii についてご紹介します。
インフルエンザの抗原検査と遺伝子検査の違い
1.「抗原検査」は医師による検査に加え、セルフチェックに使えるコロナ同時検査キット(市販薬)も
抗原検査は、かかりつけ医で受けるもののほか、セルフチェック用として、インフルエンザと新型コロナウイルス感染症を同時に検査できる市販の抗原検査キット(OTC医薬品)があります。かかりつけ医で使用される医療用抗原検査キット(体外診断用医薬品)は鼻の奥(鼻咽頭)からの検体採取が主流ですが、市販薬では自己採取が可能な鼻の手前(鼻腔)からの採取が用いられており、検体採取方法にも違いがあります。
1-1. いつお医者さんにかかる?検査のタイミングが重要です
------ 抗原検査は「偽陰性」を避けるため、発熱後12時間以上経過してから検査を
広く普及していて手軽なセルフチェック用キットもある抗原検査ですが、注意点があります。インフルエンザの発症初期はウイルスの量が少ないため、検査を受けても「偽陰性」つまり本当は感染していても陽性と判定されない場合があることです。そのため発熱後12時間以上経過してから検査を受けることが推奨されていますiii。アボットの調査結果においても3割以上の方が、「発症早期なので自宅で様子をみて、次の日に再来院して欲しい」といわれたことがある、と回答しています。実際、インフルエンザにかかったお子さんと一緒に検査を受けたけれど、親御さんは陰性。でも翌日再検査を受けたら陽性だった、という経験をお持ちの方もおられるのではないでしょうか。
2.幼児、妊婦、高齢者、高血圧や糖尿病など慢性疾患のある方に知ってほしい選択肢、「遺伝子検査」
上述のとおり、感染症の検査では実施タイミングによって「偽陰性」となる場合があります。一方で、インフルエンザは肺炎や脳症などを併発して重症化してしまう人もいることが知られています。また、インフルエンザの治療に使う抗ウイルス薬は、発症から48時間以内の服用が効果的iv。それ以降の服用開始では十分な効果が期待できません。またインフルエンザウイルス、新型コロナウイルス、溶連菌、RSウイルスなどによる感染症は、何のウイルス・細菌によるものかを特定し、それに応じた抗ウイルス薬や抗菌薬を投与する必要があります。ですが発熱や倦怠感など似たような症状を伴うため、検査なしに原因を特定するのは困難です。そこで選択肢として知っておきたいのが「遺伝子検査(核酸増幅検査)」です。
2-1. 発熱後12時間以内で、重症化リスクのある方が遺伝子検査の保険適用対象です
------ 早期服薬開始のために、12時間以内の遺伝子検査という選択肢も
遺伝子検査では、ウイルスを特徴づける遺伝子配列を増幅するため、発症初期のウイルス量が少ない時点においても高感度に検出が可能です。コロナ禍で広く知られるようになった「PCR検査」も、遺伝子検査のひとつです。医師の判断に基づき、導入している医療機関のみで受けられる検査ですが、受診したその日のうちに検査結果が出るタイプのものもあります。また、鼻の手前(鼻腔)でとった検体で検査できるので、鼻の奥(鼻咽頭)に綿棒を入れるのが苦手な小さなお子さんや、ご高齢の方にも受けていただきやすいでしょう。
2-2. 保険適用には条件があります
ただし公的医療保険の対象となるのは、重症化リスクが高いとされる方(下記参照)が発熱12時間以内に検査をした場合。この条件は、遺伝子検査が発症初期でもウイルスを高感度に検出できるという特性を生かしたものです。受けられる検査の種類は医療機関によっても異なるため、医師に相談しましょう。
まとめ:小さなお子さんを持つ親御さんや高齢者、持病のある方が確認したいこと
このように、重症化リスクの高い方は公的医療保険で「インフルエンザの遺伝子検査」が受けられる場合があります。重症化リスクを気にする方は、かかりつけ医で取り扱っている検査の種類やご自身が受けられる検査を事前に確認しておくと、いざというときの受診タイミングがわかって安心です。日頃から、かかりつけ医に相談しつつ、感染症対策を心がけましょう。
※本記事中の画像はイメージです。
iアボットダイアグノスティクスメディカル株式会社が実施したインターネット調査(調査時期:2024年12月12日~12月13日、調査対象:20~65歳の全国の男女)
iiコロナ禍で広く知られるようになった「PCR検査」も遺伝子検査(核酸増幅検査)のひとつです。
iiiインフルエンザの感染を防ぐポイント「手洗い」「マスク着用」「咳(せき)エチケット」 | 政府広報オンライン
ivインフルエンザの感染を防ぐポイント「手洗い」「マスク着用」「咳(せき)エチケット」 | 政府広報オンライン
v日本感染症学会 インフルエンザ核酸検出検査の有効活用に向けた提言(一部追記) 2025年8月20日 インフルエンザ核酸検出検査の有効活⽤に向けた提⾔
お客様がアクセスしようとしているウェブサイトは、そのサイトに記載されている特定の国または国々の居住者を対象としていることにご注意ください。 そのためサイトには、他の国々や地域では認められていない医療品、医療機器、その他の製品に関する情報や、用途についての情報が含まれている場合があります。
またアクセスしようとしているウェブサイトが、お客さまのスクリーンサイズ向けに最適化されていない場合もあります。