常にHIVの一歩先を

変異を続け、新たなリスクをもたらしかねないウイルスを追跡し、捕捉する、アボットのウイルスハンターチームをご紹介します。

※本コラムは、米国で2020年に作成された原稿を参考までに日本語訳しています。内容については英語原文が優先されます。医学的な情報を提供したり、製品を広告・宣伝する目的のものではありません。

「干し草の山から1本の針を見つけるような作業」

アボットのウイルスハンターチームが、、変異を続けるウイルスを世界中から見つけ出すために日々取り組んでいるのは、そうした困難な探索作業です。

そのための新しい技術を開発し、次世代のシークエンシングを駆使するなどしているウイルスハンターチームが先ごろ、新しいHIV(ヒト免疫不全ウイルス)株を発見したことを発表しました。

この成果はJournal of Acquired Immune Deficiency Syndromes(JAIDS)で論文発表され、約20年ぶりのHIV-1の新しいサブタイプの特定となりました1,2。

HIV-1グループM、サブタイプLと呼ばれるこの新しいHIVサブタイプは、HIVの世界的大流行を引き起こし、これまでに感染者数7,500万人、推定死亡者数3,200万人に至る原因となったウイルスと同じグループに属しています3。この研究論文の著者の1人であるミズーリ大学カンザスシティ校 口腔・頭蓋顔面科学科のCarole McArthur教授(Ph.D., M.D.)は次のように述べています。「HIVの世界的大流行を終わらせるために、私たちはこの変異し続けるウイルスを上回るような研究を続け、最先端の技術進歩と資源を駆使してその変化を監視し続けなければならないことを、今回の発見によって改めて認識することができました」

この研究論文の著者の1人であるミズーリ大学カンザスシティ校 口腔・頭蓋顔面科学科のCarole McArthur教授(Ph.D., M.D.)は次のように述べています。「HIVの世界的大流行を終わらせるために、私たちはこの変異し続けるウイルスを上回るような研究を続け、最先端の技術進歩と資源を駆使してその変化を監視し続けなければならないことを、今回の発見によって改めて認識することができました」

10億に1つを見つけ出す

この新しいHIV株の発見は、およそ40年前に始まったプロセスの努力の結晶です。

その特異的ウイルスが本当に新しいHIVサブタイプであるかを判断するには、3例が異なる状況で発見される必要があります1。今回のサブタイプの最初の2つのサンプルは1980年代と1990年代にコンゴ民主共和国で発見されました2。2001年に採取された3つ目はサンプルのウイルス量とその当時の技術の関係ではシーケンシングが困難でした2。

現在の次世代シーケンシング技術においては、以前より迅速かつ低コストでゲノム全体を研究者は解析できます。アボットの科学者は、次世代シーケンシング技術を活用するための新しい手法の開発と応用という課題に取り組み、その結果、サンプルのウイルス部分に的を絞ったうえでの完全なシーケンシングとゲノム解析を可能にしました2。

アボットの診断薬・機器事業部 首席サイエンティスト兼Global Viral Surveillance Program責任者、そしてこの研究論文の著者の1人でもあるMary Rodgers(Ph.D.)は次のように述べています。「今回のような新しいウイルスの特定は、干し草の山から1本の針を探すようなものです。技術を進化させ、次世代シーケンシング技術を駆使することで、私たちは、例えるなら磁石を使って針を見つけ出しています。

「今回の新しいHIV株については、診断検査、治療、そして潜在的なワクチンに対する影響評価に資するため、研究者に公開していきます」

世界中のウイルスを探索し続ける25年の道のり

アボットは25年前に、HIVと肝炎ウイルスを常時観察し変異を見つけるためのGlobal Viral Surveillance Programを立ち上げました。アボットが提供する診断薬を常に最新の状態に保つうえで、このプログラムが大きく貢献しています4。

「私たちが研究するウイルスはどれも、飛行機に乗ればすぐの場所に存在しています。今回の新しいHIV株の発見によって、アボットで私たちが取り組んでいることの重要性を再認識しました。たった1人でもHIVや肝炎の感染を防ぐことができれば、それはすなわち私たちが役割を果たせたということだと思います」と、Rodgersは述べています。

 

参照先

1. Robertson DL, Anderson JP, Bradac JA, et al. HIV-1 nomenclature proposal. Science. 2000;288(5463):55-56.
2. Yamaguchi J, Vallari A, McArthur C, Sthreshley L, Cloherty G, Berg M, Rodgers MA. Complete genome sequence of CG-0018a-01 establishes HIV-1 subtype L. Journal of Acquired Immune Deficiency Syndromes. 2019; https://journals.lww.com/jaids/Abstract/publishahead/Complete_genome_sequence_of_CG_0018a_01.96307.aspx.
3. Global Health Observatory Data. HIV/AIDS. World Health Organization. https://www.who.int/gho/hiv/en/.