走る哲学者、キプチョゲ選手

人生とマラソンの共通点とは

日本に息づくランニング文化
前マラソン世界記録保持者で、非公認記録ながら人類で唯一フルマラソン2時間切りを達成し、現在も世界トップレベルで進化を続けるマラソン界の絶対王者、エリウド・キプチョゲ選手。アボットは2021年よりキプチョゲ選手と彼の所属するNNランニングチームとパートナーシップを組み、さまざまなサポートを展開しています。コース新記録で優勝した2022年大会以来、2年ぶり2度目の出場となった2024年3月の東京マラソン。キプチョゲ選手はレースを終えたばかりにも関わらず穏やかな表情で日本での体験やアボットとのパートナーシップについて語ってくれました。

多くの観客が沿道を埋め尽くした当大会は印象に残ったようで「東京の観衆は素晴らしかった。スタートからフィニッシュまで人が途切れることなく、音楽や歌も聞こえてきてエネルギーやモチベーションをたくさんもらいました」と語ったキプチョゲ選手。 アボットの社員や家族が集結してランナーを沿道から応援する39km地点の「アボット・チアゾーン」で受けた応援も鮮明に覚えていて「大きな力をもらいました」と感謝を述べてくれました。

彼は以前から日本人のマラソンへの理解の深さに敬意を抱いていたといいます。「マラソンは単なるスポーツではなく日本の文化になっています。日本人は規律正しく、人々は共に助け合い、ひとつになって取り組んでいる。日本では、ランニングは個人競技ではなくチームスポーツなのです。日本人はマラソンが大好きな国民だと感じます。日本中どこへ行っても、地方の小さな町でも東京のような大都市でも、ランニング愛好者に出会います。ランニングは日本に息づくカルチャーであり、長い時間をかけて紡がれてきた伝統なのです」

チームワークが可能にする限界突破
マラソンという個人競技にチームとして取り組む、というアプローチは、アボットとキプチョゲ選手、そしてキプチョゲ選手が所属するNNランニングチームでも行われています。「アボットというチーム全体のカルチャーが好きです。私たちはランニングを通じてお互いが持つ知識や知見を交換し合い、学びを得ています。ランニング中、体の中で起こっていることに関する情報を得て、それを理解し実践につなげることで、ランニングがさらに深みのある面白いものになっているのです」

「No human is limited.」(人間に限界はない)。これはこれまでに数々の限界を突破してきたキプチョゲ選手のモットーです。この意味について聞いてみると、こんな答えが返ってきました。
「私たちは頭の中で勝手に線引きをして自分で限界を決めてしまいがちですが、それを突き抜けようと努力すべきだと思います。『No human is limited.』とはそういう意味です。自分がいる場所を確認し、その場所から壁を突き破る努力を続ける。チームとして団結することで、壁を打ち破り、その先の目標に到達できるのです。これは、マラソンに限らずなんでもそうです。1人だと10年かかることも、チームで取り組めば2年でできるはずです」

失敗から得る学び
今回の東京マラソンでは、2度目の優勝を狙ったものの、中盤からペースが落ち10位に沈んだキプチョゲ選手。まだ生々しい失意のなかにあるにもかかわらず、この体験からの学びについても語ってくれました。
「今回の体験でマラソンは人生と同じようなものだと学びました。マラソンも人生も長い旅。ハイウェイを車で走っているようなもので、時に道路に段差や穴があったりして、そのせいでパンクするかもしれない。タイヤ交換をしなければ走れないこともある。今回起こったこともそういうことです。ハイウェイに見えない段差があってつまずき、それを修正しようとしたけれど、スペアタイヤがなくてスピードを落とさざるを得ませんでした。今回の学びは、人生とは真っ直ぐのきれいな道ではないということ。困難があるからこそ面白いし、転ぶことも時には重要でその経験が気づきを生むのです。結果を受け入れることも必要です。受け入れて立ち上がり、そこから前に進む。未来に向けて動き出すことが大事なのです」

2つのオリンピック金メダルを含む数々の偉業を成し遂げてきたキプチョゲ選手ですが、まだ道半ばであると考えているようです。「私はオリンピックマラソンで3回連続の金メダルに挑戦し、それを達成した世界初の選手になりたいと思っています。そして、世界中を訪れて、この世界をランニングワールドにしていきたいのです」

アボット ・ワールドマラソンメジャーズ(AbbottWMM)の冠スポンサーであるアボットは、世界6大マラソン大会とランナーを支援しています。「人々がより健康で充実した人生を送り、成し遂げたいと願ったことを全うできるように」という想いのもと、アボットはこれらの活動を行っています。

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